~日常生活に不便を生じる肘の痛み
中年以降のテニス愛好家に生じ易いので「テニス肘」と呼ばれています。しかし、当院を受診される患者さんの多くはテニスとは無関係に日常生活の中で発生することが多いようです。
例えば洗濯物を洗濯機から引き上げたり、重い買い物荷物を毎日ぶら下げる家事労働、ピアニスト・パソコンの入力の仕事、スーパーのレジの仕事で毎日たくさんの重いペットボトルや油の缶をカゴからカゴに移動させる動作・・・など、痛みを起こす原因が似ているため総称として「テニス肘」と呼んでいます。
一方野球肘は少年野球に多く発生し、当院でも小学生の野球チーム、中学生のシニアチーム、高校生の野球部の選手達が治療に訪れます。
野球に限らず、ものを投げる動作を分析すると4つの時期に分かれます。
1ーワインドアップ期
2ーコッキング期
3ーアクセレレーション期 4ーフォロースルー期
このうちで肘に一番負担がかかるのが、3番目のアクセレレーション期です。肘関節が屈曲位で過度の外反(外側に反る)を強制されることにより、肘の内側には引っ張る力が、外側には上下の骨が衝突するような力がかかります。
成長期の骨は大人の骨と異なり、軟骨という文字通り柔らかい状態の骨ですので、外からかかる力に対して非常に抵抗力が弱いのです。
この様に抵抗力の弱い成長期の骨に過度の外反力が繰り返しかかると、肘の内側では上下の骨を連結している靭帯に「引っ張りの力」がかかり、靭帯自身に炎症を起こして痛みが生じます。更に投球時に起こる強力に収縮する筋肉の引っ張る力により、抵抗力の弱い軟骨部分をずらす様な力が繰り返しかかり、そのことで軟骨の部分がずれて痛みを更に増強させます。
肘の外側には、上下の骨が衝突するような力がかかります。過度の衝突が繰り返し起こると、成長障害が起こり、骨の壊死等も起こります。
野球肘は抵抗力のない肘に過度の力が繰り返しかかることにより起こる"使い過ぎ症候群"の一つです。
一般的にはまず内側が痛み始め、そのうち外側にも痛みが発生します。
肘を痛めている方は、おおよそ肘から指先にかけて全体的に筋肉の疲労が溜まっています。
疲労の溜まった筋肉はその柔軟性を失って硬くなっています。硬くなった筋肉を使うには力が余分に必要になり、よって肘周りの筋肉の緊張が高まってしまう。そんな悪循環が肘の痛みを慢性化させているのです。そこでこの悪循環を断ち切ることが必要で、手や指の筋肉を一時的にでもほぐしてあげることが重要になります。
肘の外側または内側に圧痛が認められます。
テニス肘の代表的なテストを紹介します。
下記みだしをクリックすると詳細が表示されます。
症状の程度によっては、原因となる動作を休ませ、患部を安静にさせます。
テニスならテニスを、野球なら野球を休めば良いのですが、仕事や家庭生活においては、なかなか休むことが出来ないのがつらいところです。
そこで極力安静にしてもらい当院においては、温熱や、アイシング、高周波電気治療(当院では筋肉の奥深い炎症に届く高周波電気・スーパーテクトロンを使用します)やレーザー光線治療、ハイボルト、超音波過流浴(オンパー)といった理学療法を行い患部の炎症を抑え、また疲労によって硬くなっている筋肉の柔軟性を正常に戻し、尚且つストレッチ等で再発しにくい状態に戻してあげます。